公営住宅家賃の法的性質

 判例では「公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべである。」と判示されている。

 この裁判は、公営住宅の明渡請求に関するものであり、使用料の支払請求に関するものではない。しかし、公営住宅法及び条例が特別法であり、民法及び借家法が一般法であることは明確に判示されている。明渡請求であっても、支払請求であっても、この順序は変わることは無い。

 ここで自治体の債権については、地方自治法第236条第2項で「金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利の時効による消滅については、法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効の援用を要せず、・・・」と規定されている。
 この条項は、自治体のすべての債権について適用される。この条項の適用について、公営住宅家賃について検討する。
 時効に関して、公営住宅法には規定が無く、その一般法である民法には援用を要すると規定されている。
 地方自治法第236条の「法律に特段の定めがある場合」とは民法規定も適用される。
 よって、公営住宅家賃については、時効の援用が必要な債権と分類されることになる。

 以上のことから、一般的に時効の援用が必要な債権は「私債権」に分類されることから、公営住宅使用料についても「私債権」であると判断される。