債権取立時の振込手数料の取扱い

国税徴収法第67条
国税徴収法基本通達第67条関係10

 例えば、税の滞納処分による給与の差押の場合。一般的には給与全額のうち差押禁止額を除いた額(差押額)を、第三債務者(会社)が処分庁(自治体)の管理口座へ振り込むことになるが、その際の振込手数料は差押額から差し引かれることになる。
 通常、債権差押に係る取立費用は滞納処分費として取り扱う必要があり、そのため、たとえ数百円であろうとも、本人に支給される額である差押禁止額の部分に食い込んではならない。
 では、この額を差押調書に記載するべきなのか、配当計算書に記載するべきなのか、が問題になる。
 国税徴収法基本通達によると次の記載がある。
「取立債務であるときは、その取立てに要する費用は滞納処分費として支出する。ただし、第三債務者が取立てに要する費用を支出し、その費用を債務の額から差し引いて給付した場合は、その費用に相当する額を滞納処分費として支出しなくても差し支えない。この場合においては、第三債務者に対し、その費用に相当する額については履行の請求をしないものとする。」
 この中の、ただし書き以降の場合い該当することになるが、調書上同記載すべきかは、残念ながら明確な記載はない。
 結論から言えば、差押調書上は取立費用を含めた額を記載し、配当計算書には実際の受領金額を記載することになる。
 差押調書と配当計算書の取り立て額が異なることにはなるが、差押調書の額以上に本人から取り立てることはできないため、滞納額+振込手数料の額を差押えることになる。
 配当計算書では、実際に取立てて処分庁の手元にあるお金を配当しなければならないのであるから、振込手数料を除いた金額しか受け取っていないのだから、その額を記載するほかはない。
 振込手数料分だけ、差押額と配当額に差ができてしまうが、本来そのままであれば、自治体が差押債権を全額取立できていないことにはなるが、基本通達でそれは請求しなくてもよい、とあるため、全額取立していないが取立事務はすべて終了しているとみなすことになる。
 以上のことから、差額について処分庁の書類上で説明する義務はないものと考えられる。
 ただし、行政配慮としての記載をすることまで禁止されているわけではないので、あえて記載することも可能である。
 滞納額と振込手数料以上の取立可能額がある債権の場合には、差押調書の財産欄に次のように記載してはどうだろうか。
「○○債権の支払請求権。ただし、上記滞納額及び取立に要する費用に充つるまで。」
 また、配当計算書の記載は次のように記載してはどうだろうか。
「○○債権の支払請求権。ただし、取立に要する費用(振込手数料○○円)を除く。」