差押後に遺贈された不動産の公売手続

地方税法第9条
民法第951条、第990条

 例題:不動産差押後、滞納者本人A死亡。法定相続人は全員相続放棄し、当該不動産は第三者Bに遺贈されその旨登記済み。この場合の徴収手続きはいかにするべきか。

 まず、遺贈が「包括遺贈」か「特定遺贈」かで手続きが変わってくる。
(1)Bに対する遺贈が包括遺贈であった場合
 民法第990条の規定により、Bは相続人と同一の権利義務が発生している。よって、ほかの相続人は全員が相続放棄しているため、当該不動産だけでなく、その他の債権債務についてもBが単独で相続していることになる。
 このことから、Aの滞納について全額をBへ承継させ、当該不動産の公売手続に進むことになる。
(2)Bに対する遺贈が特定遺贈であった場合
 当該不動産のみについてBへ遺贈する、というのが特定遺贈である。そのほかの財産については法定相続人の中で相続されることとなるため、滞納については法定相続人に対して請求しなければならない。不動産が遺贈されているため、その不動産に対する固定資産税も遺贈されている、ということは無い。
 この場合、法定相続人全員が相続放棄していることから、相続人不存在となる。よって、民法第951条の規定により、相続財産法人が形成される。
 裁判所に相続財産管理人の選任の申し立てを行い、その管理人に対して、滞納税の承継を行い、滞納整理を進めていくことになる。
 なお、A死亡前に差押処分が有効に成立していることから、その差押に基づき、当該不動産の公売手続を進めることができる。Bに所有権が移転していても、Bは所有権取得前の差押処分には対抗できない。
 相続財産管理人に対して公売通知等を送付し、Bに対しては、当該不動産の権利者の一人として、国税徴収法第55条に基づく通知をすることで足りる。